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70歳以降も働き続けたら厚生年金はどうなる?

70歳到達日の前日が属する月から被保険者資格を喪失、保険料負担はゼロに。一方で在職老齢年金の調整で「働きすぎると年金が減る」仕組みも。月給40万円の70歳従業員ケースで全パターン整理します。

✅ 2026年6月21日 一次情報確認済み(厚生年金保険法・日本年金機構)

厚生年金保険法第14条第5号(70歳到達による資格喪失)、第27条(70歳以上被用者の届出)、令和4年4月以降の在職老齢年金支給停止調整額(旧47万→50万円に統一)、2026年度の支給停止調整額50万円に基づく解説です。

この記事の目次

  1. 70歳到達で何が起きる? 厚生年金保険法第14条第5号の仕組み
  2. 在職老齢年金 ─ 「働きすぎると年金が減る」50万円の調整ライン
  3. 高齢任意加入被保険者 ─ 受給資格期間10年未満の救済策
  4. 月給40万円・70歳従業員の手取り変化シミュレーション

1. 70歳到達で何が起きる? 厚生年金保険法第14条第5号の仕組み

厚生年金保険法第14条第5号により、「70歳に達したとき」(民法上は70歳の誕生日の前日)の属する月から、厚生年金の被保険者資格を喪失します。たとえば1月15日が70歳の誕生日なら、誕生日前日の1月14日が「70歳到達日」で、1月分から資格喪失。本人負担9.150%・会社負担9.150%の厚生年金保険料が止まり、給与の手取りが大きく増えます(月給40万円なら本人負担36,600円が消滅)。

ただし、70歳以降も厚年適用事業所で働き続ける場合、勤務先は「70歳以上被用者該当届」(厚生年金保険法第27条)を年金事務所に提出する必要があります。この届出をすることで日本年金機構は給与額を把握し、後述の在職老齢年金(働きながらの老齢厚生年金)の支給停止調整を行います。届出を出さないと年金が満額支給され、後で過払い分の返還を求められるリスクがあるため、人事担当の重要業務です。

なお健康保険(協会けんぽ・組合健保)の被保険者資格は75歳到達で喪失するため、70歳〜75歳の間は「厚年負担なし・健保負担あり」の期間になります。75歳到達後は健保からも抜けて、後期高齢者医療制度に移行する流れです。

2. 在職老齢年金 ─ 「働きすぎると年金が減る」50万円の調整ライン

在職老齢年金は、65歳以上で厚生年金に加入しながら(または70歳以上被用者として)老齢厚生年金を受給する場合の支給停止調整制度です。令和4年(2022年)4月以降、65歳以上の支給停止調整額は47万円→50万円に統一・引き上げられ、2026年度も50万円の水準が続いています。

計算式は単純で、「基本月額(老齢厚生年金の月額)+ 総報酬月額相当額(標準報酬月額+直近1年の標準賞与額÷12)」が50万円を超えた場合、超えた分の1/2が支給停止になります。たとえば老齢厚生年金が月10万円、給与が月50万円(標準報酬月額500,000円)、賞与なしの方なら、合計60万円。50万円超過分は10万円、その半分の5万円が支給停止となり、実際に受け取れる老齢厚生年金は5万円/月になります。

合計が50万円以下なら支給停止なし(全額受給)。老齢「基礎」年金(1階)は支給停止の対象外で、給与に関係なく満額受給できる点も重要です。70歳以降は厚生年金の保険料を払わないにも関わらず在職老齢年金の調整は受けるため、「保険料負担なし・年金一部停止」という非対称な状態になります。

3. 高齢任意加入被保険者 ─ 受給資格期間10年未満の救済策

原則70歳で資格喪失しますが、例外があります。老齢厚生年金の受給資格期間(合算で10年)を満たしていない方は、本人の申出により厚年適用事業所での加入を継続できる「高齢任意加入被保険者」制度(厚生年金保険法第附則第4条の3)が利用可能です。海外勤務や転職を繰り返して加入期間が短い方、若い頃に未加入期間が長かった方が対象。

通常の被保険者と違い、保険料は全額自己負担(労使折半なし)。月給30万円なら9.150%×2=18.300%=54,900円が本人負担になります。会社が事業主同意して保険料半額を負担してくれる場合は労使折半が継続しますが、これは会社の任意で義務ではありません。

受給資格期間10年に到達した時点で資格喪失届を提出して終了するパターンが一般的。10年を満たすために半年〜数年加入し、その後は老齢厚生年金を受給するというルートになります。なお65歳以上70歳未満で受給資格期間未達成の場合は、国民年金の任意加入被保険者(65歳〜70歳まで)として国民年金保険料17,510円/月を払う選択肢もあり、こちらは1階のみの加入で保険料負担が軽い反面、給付増額は限定的です。

4. 月給40万円・70歳従業員の手取り変化シミュレーション

具体例で見てみましょう。月給40万円(標準報酬月額410,000円)・賞与なし・老齢厚生年金月8万円受給中の方が70歳を迎えるケース。

69歳11ヶ月までの手取り:給与400,000円から厚年保険料37,515円(410,000×9.150%)・健保保険料約20,500円・介護保険料約7,400円・所得税・住民税が天引きされ、手取りは約30万円前後。在職老齢年金は基本月額8万円+総報酬月額相当額41万円=49万円で50万円以下のため全額受給、老齢厚生年金8万円も別途振り込まれ、世帯収入合計約38万円/月。

70歳到達月以降の手取り:厚年保険料37,515円が消滅し、給与の手取りが約34万円に増加(健保・所得税・住民税は継続)。在職老齢年金は変わらず基本月額8万円+総報酬月額相当額41万円=49万円で全額受給。世帯収入合計約42万円/月で、月4万円のプラス。

会社側の人件費影響:会社負担の厚年37,515円+子ども子育て拠出金1,476円(410,000×0.36%)=38,991円が消滅。70歳従業員1名あたり月約4万円の人件費削減になり、複数の70歳超従業員を雇う企業ほど効果は大きくなります。一方で70歳以上被用者該当届の提出・労務管理は継続必要で、人事担当の負担は残ります。

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