主婦パートと106万円の壁 撤廃で何が変わる|130万・160万との違いと年収帯別の手取り試算
2026年6月27日更新(2025年6月成立の年金制度改正法と令和7年12月施行の所得税改正に対応・一次情報確認済み)
この記事の独自ポイント
- ① 年収100万〜200万円を10万円刻みで 「社保あり」「社保なし」両方の手取り試算 を掲載
- ② 夫婦合算で見た 「世帯手取りが下がらないライン」 を年収別に逆算
- ③ 撤廃後の「週20時間」をどう判定するか、所定労働時間ベースの実務的な見方 を整理
- ④ 一次情報3件(厚労省・日本年金機構・国税庁)で全数字を確認済み(2026年6月時点)
先に結論
- ・106万円の賃金要件は2025年改正で撤廃決定(公布から3年以内、目処2026年10月)
- ・撤廃後は週20時間以上働けば金額問わず勤務先の社保に加入
- ・130万円の壁(家族の社保扶養)は今後も残る
- ・配偶者特別控除は給与160万円まで満額(38万円)、198万円でゼロ
- ・配偶者の手取り影響が出やすいのは 年収130〜150万円帯。逆に 給与160万円超 で社保負担を回収しやすい
106万円の壁がなくなるのはいつから?
2025年6月13日に成立した年金制度改正法(令和7年法律第55号)で、短時間労働者の社会保険加入要件のうち「月額賃金8.8万円以上(年収換算約106万円)」の賃金要件が撤廃されることが決まりました。施行は法律公布から3年以内とされており、おおむね2026年10月が目処です。
撤廃後は、週20時間以上の勤務(学生でない・2か月超の雇用見込み)であれば、月額賃金がいくらであっても勤務先の厚生年金・健康保険に加入することになります。「ギリ8.8万円未満に抑える」働き方は意味を持たなくなります。
現行の短時間労働者加入要件は(1)週20時間以上、(2)月額賃金8.8万円以上、(3)2か月超の雇用見込み、(4)学生でない、(5)従業員51人以上の事業所の5要件で、改正後は (2) と (5) が段階的に外れます。「壁」を意識する場面が大きく変わるタイミングです。
企業規模要件も段階的に拡大される
現在は従業員51人以上の事業所が対象ですが、改正により次のスケジュールで拡大します。
- ・2027年10月:36人以上の事業所まで拡大
- ・2029年10月:21人以上の事業所まで拡大
- ・将来的には企業規模要件そのものを撤廃する方向で議論中
小規模な店舗・事業所でパートをしている方も、数年以内に「勤務先で社保加入」が標準になると見込んでおいたほうが安全です。「うちは小さい事業所だから関係ない」が通用するのはあと数年です。
130万円の壁との違い(残る壁・なくなる壁)
混同しやすいので、根拠法ごとに整理します。
| 壁の名称 | 根拠 | 2026年以降の扱い |
|---|---|---|
| 106万円(勤務先社保加入) | 健康保険法・厚生年金保険法(賃金要件) | 撤廃(週20時間判定に一本化) |
| 130万円(家族の社保扶養) | 健康保険法(被扶養者の認定基準) | 残る(週20時間未満で働く人が境目) |
| 160万円(配偶者特別控除満額) | 所得税法(令和7年改正) | 残る(給与160万円までは満額38万円) |
| 198万円(配偶者特別控除終了) | 所得税法(令和7年改正) | 残る(給与198万円超でゼロ) |
週20時間未満で働くなら、引き続き「130万円以内に収まるかどうか」が手取りに影響する最大の境目です。「106万円撤廃 = 全部撤廃」ではないので、ここを混同しないことが重要です。
160万円・198万円の税の壁(令和7年12月改正)
税側の壁も令和7年12月1日施行の改正で動きました(令和7年分以後の所得税に適用)。
- ・給与123万円:本人が「扶養親族」から外れる(合計所得58万超)
- ・給与160万円:本人に所得税がかかり始める(基礎控除95万+給与所得控除65万)
- ・給与160万円:配偶者特別控除が満額(38万円)の境目
- ・給与198万円:配偶者特別控除がゼロになる
配偶者の手取りベースで考えると、給与160万円までは配偶者(特別)控除が満額なので、配偶者側の税金は変わりません。「150万円以上稼ぐと配偶者控除が消える」は改正前の話で、今は160万円が新しい境目です。
年収帯別の手取り試算表(社保あり/なし)
本人の手取りベースで、年収100万〜200万円を10万円刻みで試算します。社保負担は給与の約14.5%(健保5.0%+厚生年金9.15%+雇用保険0.6%、会社折半後の本人負担)で概算しています。所得税・住民税は基礎控除+給与所得控除+社保控除を反映した目安です。
| 年収 | 社保なし (扶養内) | 社保あり (撤廃後) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 100.0万円 | 85.5万円 | ▲14.5万円 |
| 110万円 | 110.0万円 | 94.0万円 | ▲16.0万円 |
| 120万円 | 119.0万円 (住民税▲1万) | 102.6万円 | ▲16.4万円 |
| 130万円 | 128.0万円 (住民税▲2万) | 111.1万円 | ▲16.9万円 |
| 140万円 | ― (扶養外れ) | 119.7万円 | ― |
| 150万円 | ― | 128.2万円 | ― |
| 160万円 | ― | 136.8万円 (税ほぼなし) | ― |
| 170万円 | ― | 144.7万円 | ― |
| 180万円 | ― | 152.5万円 | ― |
| 190万円 | ― | 160.3万円 | ― |
| 200万円 | ― | 168.1万円 | ― |
※ 概算値です。社保負担率は協会けんぽ全国平均ベース(健保10.0%・厚生年金18.3%の本人半額、雇用保険0.6%)。所得税・住民税は基礎控除95万円・給与所得控除55〜65万円・社保控除を反映した目安で、扶養手当や通勤手当は含みません。正確な金額は給与明細または勤務先・自治体に確認してください。
撤廃後の3パターン家計試算(夫年収500万円想定)
撤廃後によく聞かれる「結局いくら稼げばトクなのか」を、夫の年収500万円(手取り約400万円)を想定して3パターンに整理します。
パターンA: 週20時間未満で扶養内維持(年収120万円)
- ・妻の手取り:約 119万円
- ・夫の配偶者特別控除:満額(38万円)→ 夫の税負担減 約 7.6万円
- ・世帯手取り合計:約 526.6万円
- ・特徴:社保負担なし。ただし将来年金は国民年金のみ
パターンB: 週20時間以上で社保加入(年収140万円・撤廃後)
- ・妻の手取り:約 119.7万円
- ・夫の配偶者特別控除:満額(38万円)→ 夫の税負担減 約 7.6万円
- ・世帯手取り合計:約 527.3万円
- ・特徴:社保加入で将来の厚生年金が増える。傷病手当金・出産手当金の対象
パターンC: 社保加入で給与160万円まで稼ぐ(推奨レンジ)
- ・妻の手取り:約 136.8万円
- ・夫の配偶者特別控除:満額(38万円)→ 夫の税負担減 約 7.6万円
- ・世帯手取り合計:約 544.4万円
- ・特徴:社保負担を回収でき、配偶者特別控除も満額。撤廃後の「最適解」レンジ
パターンA(120万円)と B(140万円・社保加入)は世帯手取りがほぼ同じ。「働き損ライン」は140万円付近にあり、ここを超えて給与160万円まで稼ぐと年間17万円以上世帯手取りが増えます。撤廃後は週20時間未満で抑えるか、160万円超を狙うかの二者択一が現実的です。
損しない働き方の考え方(撤廃後)
- 週20時間未満で抑えるなら、引き続き130万円以内が境目。本人の住民税(年収110万円程度から発生)と扶養手当の規定だけ要確認。
- 週20時間以上働く前提なら、撤廃後は社保加入が確定するので、社保負担(給与の約14.5%・会社折半)を回収できる給与150万〜160万円を狙う発想に切り替える。
- 配偶者特別控除を満額残したいなら、給与160万円以内。これを超えると控除が段階的に減り、198万円でゼロ。
- 「106万円を1円でも超えたら大損」は撤廃後は迷信になる。週20時間がジャストの境目。
- 給与170万円超を狙うなら、夫の扶養手当規定(会社独自)を必ず確認。月1〜2万円の手当が消えると、給与アップ分を相殺してしまうことがある。
撤廃を見越したキャリア戦略
撤廃は「働き損」が消えるタイミングです。社保加入が前提になるなら、勤務時間を増やす意味が以前より明確になります。撤廃を機に見直したい3つの観点を挙げます。
- ① 厚生年金の上乗せ:標準報酬月額88,000円(年収約106万円)で1年間加入すると、将来の厚生年金が概ね年6,000円増えます。10年加入なら年6万円、20年なら年12万円。月収を上げるほど将来年金も上乗せされます。
- ② 傷病手当金・出産手当金:健康保険の被保険者になることで、病気・ケガ・出産で働けなくなったとき標準報酬日額の3分の2(最大1.5年間)の手当が出ます。扶養内では受け取れない給付です。
- ③ 教育訓練給付・キャリアアップ助成金:雇用保険加入で教育訓練給付(一般教育20%・特定一般40%・専門実践50〜70%)が使えます。資格取得の費用補助になります。
よくある質問
Q1. 106万円の壁は本当になくなりますか?
2025年6月13日成立の年金制度改正法で、賃金要件8.8万円/月は撤廃が決定。施行は公布から3年以内(目処2026年10月)。撤廃後は週20時間以上で金額問わず社保加入となります。
Q2. 撤廃後も130万円の壁は残りますか?
残ります。130万円は健康保険の被扶養者認定基準で、今回の改正は社保加入要件の変更のみ。週20時間未満で働く方は引き続き130万円ラインを意識する必要があります。
Q3. 週20時間ぴったりだとどうなりますか?
雇用契約上の「所定労働時間」で判定されます。週20時間ちょうどなら対象、19時間55分なら対象外。残業を含めた実労働時間ではない点に注意してください。
Q4. 扶養から外れたら何の手続きが必要ですか?
勤務先が健保組合に資格取得届を提出(本人の手続きは限定的)。配偶者の勤務先には「被扶養者異動届(喪失)」の提出が必要。健康保険証の差し替え、国民年金から厚生年金への自動切替が行われます。
Q5. 撤廃後、給与が同じなら手取りはどれくらい減りますか?
額面の14〜15%が社保負担。年収120万円なら年間約17〜18万円、月額約1.4〜1.5万円の手取り減です。ただし将来の厚生年金額が増える効果と、傷病手当金・出産手当金の対象になるメリットがあります。
Q6. 「年収の壁・支援強化パッケージ」は撤廃後も使えますか?
2023年10月開始の時限措置で、社会保険適用促進手当・キャリアアップ助成金が対象。賃金要件撤廃までの過渡期措置の性格があり、撤廃後の継続可否は2026年以降の厚労省の方針確認が必要です。
Q7. 夫の扶養手当(家族手当)はどう影響しますか?
会社独自の規定が適用されます。「配偶者の年収103万円以下」「130万円以下」など独自の支給要件を設けている会社が多く、月1〜2万円の手当の停止が手取り影響に直結します。撤廃前後で必ず夫の勤務先の規定を確認してください。
Q8. 撤廃を見越して今から準備できることは?
(1)106万・130万ライン直近なら週20時間/未満を選択する基準を家族で決める。(2)iDeCo・つみたてNISAなど節税枠を確認。(3)夫の扶養手当規定を再確認。(4)時給アップ交渉の余地を見ておく。撤廃を「働き損」ではなく「年金・社保の保障に加入できる機会」と捉え直すと選択肢が広がります。
自分の年収見込みは、どの壁の手前?
配偶者の扶養内で、次の壁までの残り金額を即表示します。
年収の壁チェックを使う関連する制度ツール
- ・住民税の目安(パートでも約110万円から発生)
- ・社会保険料の計算(106万・130万を超えた後の負担額)
- ・ふるさと納税の限度額(160万円超で寄付枠が出る)
- ・iDeCoの掛金(パート加入後の節税)
出典(一次情報・2026年6月確認)
- ・厚生労働省「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」
- ・日本年金機構「短時間労働者の加入要件」
- ・厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
- ・国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
- ・国税庁 タックスアンサー No.1195 配偶者特別控除
本記事は令和7年12月1日施行の所得税改正と2025年6月13日成立の年金制度改正法(令和7年法律第55号)の確定値を一次情報で確認したものです。社会保険の運用は勤務先・健康保険組合によって異なるため、最終判断は勤務先または健保組合にご確認ください。手取り試算は概算値であり、扶養手当・通勤手当・所得控除の状況によって増減します。