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メトロノームの歴史|メルツェル1816年〜Web Audio APIまで

教養・うんちく系(出典: Wikipedia「メトロノーム」/ MDN)

メトロノームは、いまでこそスマホやブラウザで一瞬で使える道具ですが、200年前は精密機械として発明された画期的な装置でした。本記事では、メトロノームの誕生からWeb Audio APIで動く本サイトのメトロノームまで、節目となる出来事を時系列でたどります。

1. 1815年・ヴィンケルによる原型の発明

オランダのアムステルダム在住の機械技師ディートリッヒ・ヴィンケル(Dietrich Nikolaus Winkel)が、振り子の上下に重りを付けて速さを変えられる「二重振り子(double-weighted pendulum)」の機構を1815年頃に考案しました。これがメトロノームの原型で、振り子の上下の重りの位置を変えるだけで、振動回数(テンポ)を細かく調整できる仕組みでした。

2. 1816年・メルツェルの特許とM.M.表記

ドイツの発明家・楽器商であるヨハン・ネポムク・メルツェル(Johann Nepomuk Mälzel)は、ヴィンケルの発明を元に目盛りや数字を加えて1816年にロンドンとパリで特許を取得し、「メトロノーム」として商品化しました。ヴィンケルが先に発明していたため、後年「メルツェル盗作疑惑」として話題になりましたが、製品として広めた功績はメルツェルにあります。

メルツェルのメトロノームには「M.M.」(Mälzel's Metronome)の頭文字が刻まれ、ベートーヴェンが楽譜に「M.M.♩=100」と書き始めたのもこの時期です。それまでは「Allegro」「Andante」など言葉でしかテンポを指定できませんでしたが、これ以降は数値で正確に指定できるようになり、作曲・演奏の精度が飛躍的に上がりました。

3. 機械式メトロノームの構造

機械式メトロノームの心臓部は、ぜんまい仕掛けの振り子と「エスケープメント」と呼ばれる脱進機構です。腕時計と同じ原理で、ゼンマイの力を一定の速さで放出することで、振り子が等間隔で「カチ、カチ」と音を出します。振り子の上下に付いた重り(ウェイト)の位置を変えることで、振動の周期を変えてテンポを調整します。

機械式の特徴は、電源不要・電池不要で、置くだけで動くこと。一方、平らな場所に置かないと精度が落ちる、振り子の音以外(ベルのカウント機能など)が限定的、サイズが大きい──といった制約がありました。

4. 電子メトロノームの登場(昭和後期)

1970〜1980年代、水晶発振子(クォーツ)を使った電子メトロノームが登場します。BPMの設定範囲が広がり(30〜250、機種によっては5〜500)、拍子のアクセント、複合拍子、リハーサルメロディなど多彩な機能を搭載できるようになりました。日本ではセイコーやヤマハ、コルグ(KORG)が代表的なメーカーです。

電子式の利点は、精度・機能・小型化のバランス。チューナー機能を搭載した「メトロチューナー」も登場し、楽器ケースに入る薄型モデルが標準になりました。

5. スマホアプリ・ブラウザ版(2010年代〜)

2007年のiPhone登場以降、スマホアプリのメトロノームが普及します。物理ボタンや振り子の代わりに、画面のタップ操作・スライダーでテンポを変えられ、価格は無料〜数百円。タップでテンポ測定(タップテンポ)機能も標準装備になりました。

手軽屋のメトロノームは、ブラウザ標準のWeb Audio API(2011年Mozillaが提案、2017年W3C勧告候補、2021年全主要ブラウザ対応)を使って実装しています。`AudioContext`という音響処理のコンテキストを作り、`OscillatorNode`という発振器で1760Hz(1拍目)と880Hz(2拍目以降)の正弦波を生成、`GainNode`で音量制御し、`destination`(スピーカー)に接続するだけで音が鳴る、というシンプルな構造です。

ブラウザ版の利点はインストール不要・登録不要・アップデート不要。一方、ブラウザのタブをミュートしていると鳴らない、バックグラウンド再生で拍ドットの光だけ遅れる、といった制約もあります(音そのものはWeb Audio APIに先回りで予約するため正確)。

6. 現代の使われ方

メトロノームは、楽器の基礎練習以外にも、用途が広がっています。

参考文献:Wikipedia「メトロノーム」(メルツェル1816年特許の経緯)、MDN Web Docs「Web Audio API」「AudioContext」「OscillatorNode」(実装仕様)、Wikipedia「演奏記号」(速度標語)。手軽屋メトロノームの実装はMITライセンス相当のオリジナルコードです。

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