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PPAP問題と代替手段|ZipCryptoの脆弱性とAES暗号化の使い分け

セキュリティ・コンプライアンス視点

「パスワード付きZIPを添付して、そのあと別メールでパスワードを送る」──日本企業で長年標準だった、この慣習が「PPAP」と呼ばれていることをご存知でしょうか。本記事では、PPAPがなぜ問題視されるようになったのか、Windows標準でも開けるZipCrypto方式の脆弱性、その上位互換であるAES暗号化、そしてPPAPを置き換える現代的な選択肢を、コンプライアンス担当者・情シス・一般利用者の3視点で整理します。

1. PPAPとは何か

PPAPは、

の頭文字を取った造語で、2017年頃から情報セキュリティ界隈で揶揄的に使われるようになりました。問題は、同じメール経路で「ZIP→パスワード」を続けて送るため、メールを傍受されたら両方とも漏れて意味がない点にあります。「セキュリティを担保している演出」だけが残り、実際は防御になっていないわけです。

2. 2020年デジタル庁のPPAP廃止

2020年11月17日、当時の平井卓也デジタル改革担当大臣(後のデジタル庁初代大臣)が、中央省庁でのPPAPを廃止すると正式に発表しました。発表後、複数の省庁・自治体・大手企業が追従し、PPAP廃止の動きが本格化しました。

廃止の理由として挙げられたのは、(1) 別メールでパスワードを送ってもセキュリティ向上にならない、(2) 受信側のマルウェア検査をすり抜けてしまう、(3) ZIPの解凍・パスワード入力の手間で業務効率が下がる、の3点です。代わりに推奨されたのが、共有ストレージのリンク送付・S/MIMEなどのメール暗号化・大容量ファイル転送サービスの活用です。

3. ZipCryptoの脆弱性

そもそもZIPの標準暗号方式「ZipCrypto」自体に技術的な弱さがあります。ZipCryptoは1990年代のPKZIP 2.0時代に設計されたストリーム暗号で、32ビットCRCを内部状態に組み込む独自構造を持っていますが、現代の暗号学的基準では「既知平文攻撃(known-plaintext attack)」に対して脆弱です。

具体的には、ZIPに含まれるファイルの一部(例えばJPEG画像の最初の数バイト「FF D8 FF E0 ...」など、推測しやすい先頭バイト)がわかれば、PCのリソース次第で数時間〜数日でパスワードを解読できる場合があります。「数字8桁程度のパスワードなら数秒で破られる」とされ、機密ファイルの保護には不向きです。

4. AES暗号化(WinZip方式)

上位互換として2003年に登場したのが、WinZip 9.0が採用した「AES暗号化」です。AES(Advanced Encryption Standard、米国NIST標準)は、現代のオンラインバンキング・SSL/TLS通信・iOSのフルディスク暗号化など、現代社会の根幹を支える暗号アルゴリズムです。鍵長は128/192/256ビットの3種類があり、AES-256は実用的な総当たり攻撃には耐えうるとされます。

ZIPでAES暗号化を使うには、解凍する側に対応ソフトが必要です。具体的には7-Zip 9.20以降、WinRAR、The Unarchiver、Keka、Bandizipなどが対応します。Windows標準のエクスプローラー(Windows 10/11)は、執筆時点(2026年6月)でもAES暗号化のZIPは開けず、別途ソフトをインストールする必要があります。

手軽屋ZIP作成ツールでは、「強度重視」モードを選ぶとAES-256で暗号化します。社内ファイルの長期保管・機密性の高い書類の自己バックアップなどに向いています。

5. PPAPに代わる現代的な選択肢

6. シチュエーション別の選び分け

シチュエーション推奨方式
取引先に契約書送付(環境不明)共有ストレージ or ZipCrypto+別経路
社内サーバーへ機密データ保管AES-256のZIP
中央省庁・自治体へ書類送付PPAP廃止対応=共有ストレージ
家族・友人に写真共有パスワードなしZIPで十分
医療情報・個人情報の長期保管専門家相談(AES単体では不十分な場合)
本記事の出典:Wikipedia「ZIP(ファイルフォーマット)」(ZipCrypto脆弱性・AES採用経緯)、Wikipedia「PPAP(セキュリティ)」(廃止経緯)、デジタル庁関連報道(2020年11月発表)、IETF RFC 1951「DEFLATE」(圧縮仕様)。最新のコンプライアンス要件は所属組織の情報セキュリティ部門にご確認ください。

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