出産手当金とは — 健康保険法102条の給付
出産手当金は、健康保険の被保険者本人が出産のために会社を休み、給与の支払を受けられなかった場合に、産前42日(多胎妊娠は98日)から産後56日までの計98日(多胎154日)を上限として、1日あたり「標準報酬日額の2/3」が健康保険から支給される現金給付です。根拠は健康保険法102条。
つまり「給与の代わりにもらえる手当」であり、本ツール(産休・育休の期間計算)で算出される産前産後の期間がそのまま出産手当金の支給対象日数の上限になります。
いくらもらえるか — 計算式
日額の計算式は以下のとおりです。
1日あたり = (支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均)÷ 30日 × 2/3
「標準報酬月額」は健康保険の保険料を決めるための月収の階級分けの値(給与+通勤手当+残業代等の平均)です。給与明細の額面そのものではなく、4〜6月の平均で算定された等級の値が使われます。
<計算例>月給30万円(標準報酬月額30万円)の人が98日間取得した場合
- 日額:300,000 ÷ 30 × 2/3 = 6,667円
- 合計:6,667円 × 98日 = 約65万3千円
月給40万円なら約87万円、月給50万円なら約109万円が目安。出産1回でこの金額がまとめて入ってくると、産休中の心理的安心感は段違いです。
2025年4月以降の特例 — 加入1年未満は32万円固定
協会けんぽは、支給開始日以前の被保険者期間が12ヶ月に満たない人について、計算ベースとなる標準報酬月額を「全被保険者の平均額」と「本人の平均額」の低い方とする扱いをしています。2025年4月以降、この「全被保険者の平均額」が30万円から32万円に引き上げられました。
つまり中途入社で1年未満の人は、実際の月給がもっと高くても32万円ベースで計算されるため、給与額面の2/3より低い金額になることがあります。フルに受給するためには、転職直後の出産については入社1年経過まで待てるなら待った方が金額面で有利です(もちろん健康優先)。
多胎妊娠は産前98日 — 1.5倍以上の給付
双子・三つ子などの多胎妊娠は、労基法65条により産前休業が6週→14週に延長されます。同様に出産手当金も産前98日+産後56日=合計154日が支給対象(健保102条)。
月給30万円なら6,667円×154日=約103万円になり、単胎の98日(約65万円)から1.5倍以上。多胎妊娠は経済的にも体力的にも負担が大きい分、給付制度は手厚く設計されています。
申請の流れ — 書類と提出先
- 勤務先の人事・労務担当に「出産手当金支給申請書」(協会けんぽ・健保組合所定の用紙)を依頼
- 医師または助産師に「出産予定日/出産日/出産児数」の証明欄を記入してもらう(産後申請の場合)
- 勤務先に給与支給状況を記入してもらう(産休中に給与が支給されていないことの証明)
- 協会けんぽ(健保組合の場合は当該組合)に郵送または窓口提出
- 申請から約2週間〜2ヶ月で指定口座に振込
産前産後をまとめて1回で申請する人が多いですが、産前と産後を分けて申請してもOK。経済的に厳しい場合は産後できるだけ早く申請しましょう。申請期限は産休開始日翌日から2年(時効)。
注意すべき調整事項
- 給与が一部出る場合:給与日額が出産手当金日額より少なければ差額が支給、上回れば支給停止
- 傷病手当金との調整:切迫早産で傷病手当金を受けていた人は、出産手当金支給開始日以降は出産手当金が優先(重複給付不可)
- 退職後も継続給付:退職日までに継続して1年以上被保険者だった人は、退職後も出産手当金を引き続き受給可能(健保104条)
- 個人事業主・国保加入者は対象外:自営業者で出産する人は出産手当金の対象外(出産育児一時金42万円は別途給付)