A4=440Hzと平均律の歴史: 1939ロンドン会議・1955年ISO 16・平均律と純正律
現在世界中で使われている「A4=440Hz」がどう決まったか、Wikipedia公式情報をもとに音楽史の流れを整理します。
バラバラだった近代以前のピッチ
18〜19世紀のヨーロッパでは、教会・宮廷・オペラ座でそれぞれ異なる基準音が使われていました。バロック時代のドイツの教会オルガンはA=465Hz前後、ヴェネツィアのオペラはA=420Hz前後など、地域差は1音(半音×2)近くありました。 演奏会のたびに楽器を調律し直す手間と、声楽家・管楽器奏者の負担が大きく、19世紀後半から国際標準化の議論が始まります。
1885年ウィーン会議・435Hzの時代
1885年、オーストリア・ハンガリー帝国主導のウィーン国際会議で、初の国際標準としてA=435Hzが定められました。 フランス政府が1859年に435Hz(Diapason normal)を法令で決めたのを踏襲した形です。これは50年近く続きますが、オーケストラの実演奏は徐々に高くなる傾向にあり、20世紀前半には440Hz前後が主流に。
1939年ロンドン会議: A4=440Hzへ
1939年5月、英国規格協会(BSI)主催のロンドン国際会議で、A4=440Hzが新たな国際標準として提案・採択されました。 実演奏での440Hz化を追認する形ですが、第二次世界大戦の勃発で各国の正式批准が遅れ、戦後の音楽界復興とともに広く採用されていきます。
1955年ISO 16: 国際標準化機構による正式化
1955年、国際標準化機構(ISO)がISO 16: Acoustics — Standard tuning frequency (Standard musical pitch)として「A4=440Hz」を正式な国際規格に制定しました。 1975年に再確認され、現在の世界中の音楽教育・楽器製造・電子音源の基準となっています。
ただし演奏現場では442Hz(ベルリン・フィル等の伝統)、443Hz(ウィーン・フィル)、415Hz(古楽演奏)など、楽団・ジャンルで異なる慣習が今も並存します。
平均律と純正律: 周波数比の話
A4=440Hzを基準に音名と周波数を結ぶ規則を音律(temperament)と呼びます。代表的なものは3つ:
- 等分平均律(12-TET): オクターブを12等分。各半音の比は2^(1/12)≈1.0594。現代の標準。どの調でも均等に「ややズレ」る
- 純正律(Just intonation): 5度=3:2、4度=4:3など整数比。和音の響きが純粋だが、転調すると破綻
- ピタゴラス音律: 5度=3:2の積み重ね。古代ギリシャ起源。3度の響きが濁る
ピアノ・ギター・電子楽器の現代音楽はすべて等分平均律。バッハの「平均律クラヴィーア曲集」は当時のヴェルクマイスター調律(ウェル・テンペラメント)で、現代の等分平均律とは厳密には別物です。
「セント」と±5セントの根拠
セント(cent)はAlexander John Ellis(1814-1890)が考案した音程差単位で、1オクターブを1200等分したものです。半音=100セント。 人間の聴覚で「ズレている」と確実に感じるのは8〜10セントから、訓練された聴覚なら3〜5セントまで判別できると言われます。
このため楽器チューニングでは±5セント以内に収まれば実用上「合っている」と判定する慣例があり、本ツールもこの基準で緑ゾーン表示しています。