葬式費用は相続財産から控除できる
葬式費用は被相続人(故人)の債務ではありませんが、相続税法第13条・第21条の15・第21条の16の規定により、相続税の課税価格を計算するときに相続財産から控除することが認められています。
国税庁タックスアンサーNo.4129「相続財産から控除できる葬式費用」(令和7年4月1日現在法令等)に控除可能な葬式費用と控除できない費用が明示されています。
葬式費用とは、本来は被相続人の債務ではありませんが、相続税の計算をする場合には、これらの相続財産の価額から差し引くことになっています(国税庁 No.4129)。
つまり、葬式費用を支払った分だけ課税対象となる相続財産が減り、結果として相続税が軽減されます。
控除できる葬式費用(国税庁No.4129)
控除の対象となる葬式費用は、おおむね次のようなものです:
- 通夜・告別式の費用:会場使用料、祭壇、棺、骨壺、霊柩車、寝台車。
- 火葬・埋葬・納骨費用:火葬場使用料、骨上げ、納骨にかかる費用。
- 遺体・遺骨の回送費用:故人が遠方で亡くなった場合の遺体搬送、遺骨の運搬費用。
- 葬式の前後に通常必要となる費用:通夜の食事代、精進落とし、湯灌、御膳料、御車料。
- お寺などへの読経料・お布施・戒名料:仏式・神式・キリスト教式を問わず、宗教者への謝礼。
- 死体捜索・運搬費用:海難事故・山岳事故などで遺体捜索が必要だった場合の費用。
これらの費目を合計して相続財産から控除できます。一般的な家族葬なら100万円程度、一般葬なら200万円程度が控除対象になります。
控除できない費用
一方、次の費用は葬式費用としては控除できません:
- 香典返し:香典は遺族の所得ではなく非課税となるため、対応する香典返しの費用も控除対象外。
- 墓石・墓地の買入費用、墓地の借入料:墓地・墓石購入費用、永代供養料、墓地の永代使用料はすべて控除対象外。
- 初七日や法事などの費用:初七日・四十九日・一周忌・三回忌などの法要費用は対象外。ただし、初七日法要を告別式と同日に行う「繰上げ初七日」の場合、告別式の費用に含めて控除できる場合があります(実務的には認められるケースが多い)。
- 遺体解剖・検案費用:警察介入による検視・解剖の費用、医師の死亡診断書発行費用は葬式費用には含まれません(ただし死亡確定後の手配は別)。
墓石・墓地は故人の祭祀財産(相続税法12条)として相続税非課税ですが、その購入費用は葬式費用控除の対象でも非課税財産でもなく、単純に経費とは扱えません。
領収書のないお布施をどう扱うか
お布施・読経料・戒名料は寺院に直接お包みする慣習で、領収書が出ないケースがほとんど。しかし国税庁の運用では、領収書がなくても次の情報を記録すれば葬式費用控除の対象になります。
- 支払日(西暦・和暦どちらでも可)
- 金額(袋に包んだ実額)
- 支払先(寺院名・住職名)
- 支払目的(読経料・戒名料・お布施・お車料など)
- 支払場所(寺院本堂・葬儀会場控室など)
これらを葬儀直後に手帳・スマホメモに記録しておくのがコツ。後から思い出して書くと正確性を欠き、税務調査で否認されるリスクが高まります。可能なら寺院に「領収書をお願いできますか」と一言相談を。最近は領収書発行に応じる寺院も増えています。
香典は非課税・社葬の香典は会社処理
香典の税務扱いは:
- 個人葬の場合の香典:遺族にとっては「社会通念上相当と認められる範囲」内なら所得税法上非課税(所得税基本通達9-23)。相続税の課税対象でもありません。
- 香典返しの扱い:香典が非課税のため、香典返しは葬式費用控除の対象外(双方非課税)。
- 会社からの弔慰金:被相続人の勤務先からの弔慰金は、業務外死亡で給与の半年分まで、業務上死亡で給与の3年分まで相続税非課税(相続税法基本通達3-20)。これを超える部分は退職手当金等として相続税の対象。
- 社葬の香典:会社が受け取った香典を遺族に渡す場合、法人の収益にはならない。会社が受領しそのまま会社経費に使う場合は法人の収益となる(法人税基本通達4-2-4)。
香典の合計が100〜200万円程度なら社会通念上相当の範囲内として全額非課税。これを大幅に超える場合(高名な経営者など)は税務署に相談を。
喪主以外が負担した葬式費用も控除対象
葬式費用の控除は「実際に負担した相続人」が控除するのがルール。喪主が全額立替えた場合は喪主の取得財産から控除しますが、喪主以外の相続人が一部負担した場合はその相続人の取得財産から控除できます。
- 喪主が100万円立替え、長男が50万円負担 → 喪主100万円控除+長男50万円控除(合計150万円)。
- 領収書の宛名が喪主名義でも、実際の負担者がメモ・振込記録で明らかにできれば控除可。
- 包括受遺者(遺言で遺産を包括的に受け取る人)も葬式費用を控除可。
- 相続放棄をした人は葬式費用控除の対象外。相続税申告書に記載できません。
- 制限納税義務者(外国に住む相続人で日本に法定住所がない人)は、葬式費用控除の対象外。
相続税申告書への記載方法
相続税の申告は被相続人の死亡を知った日から10か月以内に、被相続人の住所地の税務署へ。葬式費用は申告書の以下の項目に記載します。
- 第13表(債務及び葬式費用の明細書):葬式費用の内訳を費目別・支払日別・支払先別に記載。
- 第15表(相続財産の種類別価額表):葬式費用の合計額を控除額として記入。
- 添付書類:葬儀社の領収書(コピー)、お布施のメモ、参列者リスト。
- 申告期限後の発生分:四十九日法要は対象外ですが、四十九日までに発生した費用(追悼施設使用料・追加返礼品など)で領収書が遅れて到着したものは、申告期限後でも修正申告で控除可。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。配偶者と子2人なら4,800万円。これを超える相続財産がある場合のみ相続税申告が必要で、葬式費用控除を活用する意味があります。
関連ツール・記事
- 葬儀費用シミュレーター — 8社×形式×地域×宗派で総額比較。
- 葬儀形式の比較とリスク — 直葬・家族葬・一般葬の後悔ポイント。
- 葬祭費補助金・互助会・生前予約の選び方 — 国保・健保の補助金申請手順。
- 相続税試算 — 基礎控除・配偶者控除を含む相続税の概算。
- 遺言書テンプレート — 自筆証書遺言の様式と要件。