通算1年6ヶ月(547日)と退職後継続給付の完全ルール 2026
傷病手当金の支給期間は『支給開始日から通算して1年6ヶ月(547日)』。2022年1月1日施行の健康保険法改正で、暦上1年6ヶ月から『支給日数の通算』に変わった。 途中で復職して給与が出た期間は通算カウントから外れ、再休業すれば残日数を消化できる。 通算終了後でも、退職後継続給付の要件を満たせば退職後も残日数まで支給される。 4つの軸で整理する。
改正前後の比較: 2022年1月1日が分岐点
2022年改正は『支給開始日から数えて1年6ヶ月の暦日』を最終日とする旧ルールから、『実際に支給を受けた日数の通算が547日(暦の1年6ヶ月相当)』に変更したもの。 復職期間が長い人ほど改正の恩恵は大きい。
| 項目 | 改正前(〜2021/12/31) | 改正後(2022/1/1〜) |
|---|---|---|
| 支給期間の数え方 | 支給開始日から暦上1年6ヶ月 | 支給日数の通算1年6ヶ月(547日) |
| 復職期間の扱い | 期間内に含まれるが支給なし | 通算カウントから除外(残日数温存) |
| 再休業時の対応 | 残期間内であれば再支給 | 残日数まで再支給可能 |
| 適用対象 | 2021年12月以前に開始した請求 | 2022年1月以降に支給開始した請求(経過措置適用) |
なお経過措置として、2021年12月末時点で支給中だった人も、その時点で通算ルールが適用される。 旧制度で打ち切られた人で、通算では残日数があるケースは協会けんぽ・健保組合に確認するのが確実。
復職挟みの計算例: 6ヶ月休→4ヶ月復職→再休業のパターン
実際に残日数がどう計算されるか、3つのケースで確認する。復職中の給与が出た日は通算カウントから除外され、休業して傷病手当金が支給された日のみカウントされる。
ケースA: 改正後ルール(標準型)
- 1回目休業: 180日(6ヶ月)支給 → 残日数 547-180 = 367日
- 復職: 4ヶ月(給与あり・傷病手当金なし)→ 通算カウントなし
- 同一傷病で再休業 → 367日まで再支給可能
- 合計: 180日支給 + 復職4ヶ月 + 367日支給 = 暦上は約20ヶ月続く支援
ケースB: 改正前ルールだと(参考)
- 1回目支給開始から暦18ヶ月後が終了日(復職期間も期間内に含まれる)
- 同じ条件で計算すると、復職4ヶ月分は『支給期間内で支給なし』扱い
- 再休業しても残8ヶ月(暦)しか支給対象にならない
- 改正後と比べて約4ヶ月分損する計算
ケースC: 半日復職(短時間勤務)の扱い
- 復職後の給与が傷病手当金の日額より少ない場合、差額が支給される
- 差額支給日も1日として通算カウントに含まれる(部分支給でも消化)
- 『フル復職せず時短だけ続ける』戦略は通算消化を早めるので、長期見通しでは不利になることも
同一傷病 vs 別傷病の判定: 別傷病なら通算リセット
通算547日は同一傷病ごとの上限。新たに別の傷病で休業すれば、その傷病で新たに547日の支給期間が始まる。 ただし『別傷病』の判定は厳密で、医学的に独立した疾患と認められる必要がある。
| ケース | 同一/別 | 通算扱い |
|---|---|---|
| うつ病で180日 → 復職 → うつ病再発で再休業 | 同一 | 残367日 |
| うつ病で支給 → 完治宣言 → 数年後また発症 | 同一(社会的治癒なし) | 残日数のみ |
| うつ病で180日 → 完治+無症状5年 → 別傷病として診断 | 別(社会的治癒成立) | 新たに547日 |
| 骨折で支給中 → 治療中にがん発見で別途休業 | 別傷病 | がん側は新たに547日 |
| うつ病で支給中 → 適応障害も併発診断 | 判断分かれる | 同一精神疾患として扱われることが多い |
『社会的治癒』とは、医学的にも症状がなく、社会通念上完治とみなされる状態が一定期間(一般的に5年以上)継続することを指す。 完治宣言だけでは社会的治癒とは認められず、就労実績・通院・服薬の有無が考慮される。 メンタル疾患は社会的治癒の判定が厳しいので、再発時は同一傷病として残日数のみ支給になる可能性が高い。
退職後継続給付: 1年加入+退職日に受給可能状態の二要件
退職後も傷病手当金を継続するには、健康保険法104条の2つの要件を両方満たす必要がある。 『退職後の継続給付』と『退職前の在職中支給』を別物と認識すること。
退職後継続給付の必須2要件
- 退職日時点で継続して1年以上被保険者だった(複数の健保を通算可・任意継続期間は対象外)
- 退職日に傷病手当金を受給中または受給可能な状態だった(=労務不能で出勤せず)
| 退職日の状況 | 退職後継続給付 |
|---|---|
| 受給中で当日も休業 | ○ 残日数まで継続 |
| 受給中だが退職日に出勤(挨拶等) | × 労務不能要件× |
| 受給中だが退職日に有給消化 | × 報酬支払あり=労務可能 |
| 退職日に待期完成(4日目)だが申請前 | ○ 受給可能状態とみなされる |
| 退職日に待期未完成(休業3日以内) | × 受給資格未発生 |
よくある失敗
- 退職日に挨拶や引継ぎで出勤するだけで、退職後継続給付の対象から外れる
- 『有給を残しているから退職日に有給扱い』にすると労務可能日として扱われ、要件を満たさない
- 転職前提なら退職日の前日までに有給を消化し、退職日は完全に休業状態にしておく
- 退職後継続給付は残日数まで。新規発症の傷病手当金は退職後はもらえない
残日数・退職後継続給付の可否をシミュレーターで確認
支給開始日・既支給日数・復職期間・退職予定日・加入期間を入力すれば、改正後ルールに沿った残日数と退職後継続給付の対象判定を一括計算。
→ 傷病手当金シミュレーターを使う