給与3%アップでも生活が楽にならない理由|CPIと実質賃金の見方
実質賃金は「名目賃金 ÷ 物価」で計算します。物価が3%超上がれば、3%昇給でも実質はマイナスです。 総務省統計局のCPIと厚労省の毎月勤労統計の見方を整理します。
1. 実質賃金の定義
実質賃金とは、名目賃金(給与明細の額面)を物価指数で割り戻した値です。物価が上がるほど、同じ給料で買える量は減るため、実質賃金は「給料の購買力」を表します。
厚生労働省の毎月勤労統計調査では、名目賃金指数と消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)から実質賃金指数を算出して公表しています。実質賃金指数が前年同月比でマイナスなら、給料は上がっても暮らしは厳しくなっている状態です。
2. 3%昇給×3%物価上昇=実質ゼロ?
名目賃金が前年比3%増、物価も3%増のとき、実質賃金は1.03 ÷ 1.03 = 1.00で、ぴったり横ばいです。物価が3.5%上がっていれば、1.03 ÷ 1.035 = 0.995で約0.5%減になります。
- ・名目+3%/物価+2%:実質賃金 約+1.0%
- ・名目+3%/物価+3%:実質賃金 ±0%
- ・名目+3%/物価+4%:実質賃金 約−1.0%
- ・名目+1%/物価+3%:実質賃金 約−1.9%
3. 総務省統計局のCPIをどう読む
総務省統計局のCPI(消費者物価指数)は2020年基準で公表されており、月次の「総合」「コアCPI(生鮮食品を除く総合)」「コアコアCPI(生鮮食品およびエネルギーを除く総合)」の3つが軸です。報道で「物価上昇率」と言うときは多くが「コアCPI」を指します。
実質賃金の計算に使う物価は、厚労省の公表では「持家の帰属家賃を除く総合」が使われ、家賃を擬似的に支払っていることにする項目を除いた指数です。新聞のCPI見出しと、実質賃金算出に使う指数は微妙に違う点を知っておくと混乱しません。
4. 「ベースアップ」と「定期昇給」を区別する
給与3%アップという言い方には、定期昇給(年齢・勤続年数に応じた自動加給)が含まれているケースと、ベースアップ(賃金テーブル自体の引上げ)だけを指すケースがあります。
- ・定期昇給込み3%:個人の給与は3%上がるが、賃金テーブル自体は据え置きの場合あり
- ・ベースアップ3%:賃金テーブルが3%底上げされ、全社員に効く(金額大)
- ・春闘の妥結率は「定期昇給+ベースアップ」の合計で示されることが多い
ニュースで「3%賃上げ妥結」と聞いたら、内訳のベースアップ分を確認するのがおすすめです。ベースアップが小さいと、若手は昇給するけれど40代後半以降は据え置きという結果になることがあります。
5. ボーナス込みで判断するときの注意
年収ベースで「3%増」と言われても、ボーナスは業績連動でブレが大きく、ベースアップ相当とは別物です。毎月勤労統計でも「現金給与総額」「定期給与(毎月の固定的給与)」「特別給与(賞与)」を別集計しています。
- ・現金給与総額:基本給+手当+残業+賞与の合計
- ・定期給与:基本給+固定的手当(生活実感に直結)
- ・特別給与:賞与・期末手当(ブレが大きい)
住宅ローン・教育費・固定費の判断には、定期給与ベースの実質賃金を見るのが安全です。賞与は減額・無支給のリスクがあるため、固定費はそちらに合わせない方が家計は破綻しません。
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