3点セットの全体像
日本のB2B取引では、注文書(発注書)・納品書・請求書の3書類で取引の証跡を残す商習慣が一般化しています。米国型のPurchase Order/Invoiceに近いものの、間に「納品書」が入るのが特徴。
| 書類 | 発行する側 | 発行タイミング | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| 注文書(発注書) | 買い手 | 取引開始時 | 「これを注文します」の意思表示 |
| 注文請書 | 売り手 | 注文受領後 | 「受注しました」の承諾 |
| 納品書 | 売り手 | 納品時 | 「これを納めました」の通知 |
| 受領書(検収書) | 買い手 | 受領・検収時 | 「受け取りました」の確認 |
| 請求書 | 売り手 | 納品後(締め日) | 「代金を支払ってください」の請求 |
| 領収書 | 売り手 | 入金受領後 | 「支払を受け取りました」の証憑 |
注文書(発注書)の役割
買い手が売り手に対して「この条件でこれを発注します」と明示する書類。商品名・数量・単価・納期・納品場所・支払条件などを記載します。法律上は民法555条の売買契約における「申込み」に該当し、注文請書(承諾)と組み合わせて契約成立とみなされます。
下請法対象取引では、親事業者は注文時に必ず3条書面(注文書)を交付する義務があり、口頭発注は違法。3条書面には品名・数量・代金額・支払期日など12項目を記載します。
納品書の役割
納品書は「注文どおりに納品しました」と買い手に通知する書類。納品書番号・納品日・品目・数量・単価・税率・合計を記載し、商品と一緒に同梱(物販)またはメール添付(成果物・ソフトウェア)して送ります。
- 物販・建設業:商品と一緒に紙の納品書を同梱(封筒に入れる/梱包箱に貼付)
- 業務委託・成果物:納品物のZIPファイルや成果物PDFと一緒に納品書PDFをメール添付
- 定期役務(SaaS等):月次の利用実績をまとめて納品書として発行
納品書の発行は法的義務ではないものの、納品の証拠・税務調査での突合・債権管理(請求書発行前のチェック)に欠かせないため、商習慣として広く根付いています。
受領書(検収書)と受領印
買い手が納品物を受け取ったあと、納品書の控えに受領印(社判または担当者印)を押して売り手に返す——これが日本のB2Bでよく見る「納品書の控えを返す」運用。控えの代わりに別書類として「受領書」「検収書」を発行することもあります。
受領書を発行するメリットは3つ:
- 売り手の債権発生日が明確になる(受領日=検収日)
- 納品物に瑕疵があった場合の責任分界が明確になる
- 下請法での「物品等の受領後60日以内」の支払期日カウント基準日が確定する
ITシステム開発などの完了基準があいまいになりがちな取引では、受領書ではなく「検収書」を必ず取り交わすことが推奨されます。検収書の日付が、契約上の支払期日カウントの起算日になるためです。
請求書の役割
納品が終わった後(あるいは月締めで複数納品をまとめて)、売り手が買い手に代金を請求する書類が請求書です。納品書と同じ品目を記載しますが、こちらは「いくら払ってください」が主目的。
2023年10月のインボイス制度開始により、適格請求書発行事業者は適格請求書(インボイス)として6項目(発行者名・登録番号・取引年月日・取引内容・税率ごとの対価・税率ごとの消費税額・受領者名)を満たす請求書を発行する義務があります。納品書と請求書を組み合わせて6項目を満たす運用も国税庁No.6625で認められています。
領収書の役割
請求書の代金を入金してもらった後、売り手が「受け取りました」と発行する書類。民法486条で買い手から請求された場合の発行義務があります(売り手都合の発行は任意)。
銀行振込の場合は通帳の振込履歴やインターネットバンキングの取引明細が領収書代わりになるため、明示的に発行しないことが多いです。現金・小切手・電子マネー決済では領収書を発行するのが一般的。5万円以上の領収書には印紙税が課税されます。
3点セットを使うメリット
- 証跡が明確:注文〜納品〜請求の各段階で書類が残り、税務調査・監査・トラブル対応で時系列が分かる
- 債権管理がしやすい:納品書発行=売上計上のトリガーになり、請求書発行漏れを防げる
- 下請法対応がスムーズ:注文書(3条書面)→納品書→検収書→請求書の流れがそのまま下請法のフローに整合
- 与信判断に使える:取引先別に3点セットの遅延状況を見れば、支払遅延リスクが定量化できる
3点セット運用の落とし穴
- 納品書と請求書の品目不一致:途中で値引・追加納品があった場合、最終納品書と請求書がズレるとインボイス制度の集計が崩れる
- 受領印をもらえない:受領印を押す文化のない取引先(特に外資・スタートアップ)も増加。検収書の電子化やメール返信で代替する運用が必要
- 注文書の口頭省略:常連取引で注文書を省略すると、下請法対象なら違法。LINEやメールでも構わないので必ず書面(電磁的記録含む)化する
- 電子帳簿保存法対応:3点セットをPDFやメールで受け取った場合、すべて電子取引データ保存の対象になり、検索要件(取引日・金額・取引先で検索可)を満たす必要がある
3点セットを電子化するときの注意
紙運用から電子取引に切り替える場合の主なポイント:
- PDF納品書をメール送付した場合、受領側は電子帳簿保存法の3要件(真実性・可視性・検索)を満たして保存する義務
- 電子契約サービス(クラウドサインなど)を使う場合は、注文書〜検収書まで一気通貫で電子化できる
- 受領印の代わりに電子署名・タイムスタンプを付与すれば法的効力は維持される
- 取引先が紙運用を継続している場合は、PDFを印刷して受領印を押した紙を再度スキャンする「ハイブリッド運用」になりがち
本ツールで作る納品書
本ツールで作成した納品書は、3点セットの「納品書」部分に該当します。インボイス登録番号・税率ごとの端数処理を満たしているため、適格請求書として運用することも可能。請求書段階で別ツール(請求書作成)を使えば、3点セットを一気通貫で揃えられます。
関連ツール
納品書の作成・印刷で納品書本体を作成し、請求書の作成で締め後の請求書、領収書の作成で入金時の領収書を、それぞれブラウザだけで作れます。