災害時の授乳・調乳:液体ミルクとコップ授乳の知識
停電・断水でお湯も哺乳瓶も使えないとき、赤ちゃんにミルクをどう与えるか。 実例と厚労省ガイドをもとに、72時間を乗り切る具体策を整理します。
過去の災害から見えた課題
2016年熊本地震・2018年北海道胆振東部地震では、避難所で粉ミルクの調乳ができない、 哺乳瓶の消毒ができない、母乳のための授乳室がないなど、乳児を抱えた家族が深刻な困難に直面しました。 この経験を受けて厚労省は2019年の支援ガイド改定で「災害時の調乳方法」を明記しました。
液体ミルクの活用
2019年から国内販売が始まった液体ミルク(江崎グリコ「アイクレオ」・明治「ほほえみ」)は、 常温保存可・調乳不要・賞味期限6〜12ヶ月で、災害備蓄に最適です。
- 缶・パウチタイプで直接哺乳瓶に注げる
- 北海道胆振東部地震では支援物資として大規模配布の実績
- 普段の外出時・夜間の救援用としても便利
- 家庭備蓄の目安は3日分(1日5〜7本×3日=15〜21本)
紙コップ授乳の方法
哺乳瓶が消毒できない、または手元にない場合、清潔な紙コップで授乳が可能です。 WHOも推奨する方法で、生後数日の新生児でも飲めます。
- 赤ちゃんを縦抱きにして、ガーゼなどで首を支える
- 紙コップの縁を下唇に軽く当てる
- ミルクを唇まで近づけ、赤ちゃんが舌で飲む動きをするのを待つ
- 口に流し込まず、赤ちゃんのペースで飲ませる
- 1回20〜30分かけてゆっくり飲ませる
ペットボトル水で調乳する場合の注意
災害時のペットボトル水での調乳には、硬水を避ける必要があります。 硬水(ミネラル含有量が多い水)は赤ちゃんの内臓に負担をかけ、消化器系の症状を引き起こすリスク。
- 軟水(OK):日本の水道水・国産ペットボトル水(南アルプス天然水・い・ろ・は・す等)
- 硬水(NG):エビアン・コントレックス・ペリエなど海外産の多くは硬水
- ラベルで「硬度」を確認。120mg/L未満が軟水の目安(赤ちゃんは60mg/L未満が望ましい)
- 不安なら「赤ちゃん用」表記のあるベビー用水を選ぶ
調乳の最低条件
災害時でも、粉ミルク調乳の70℃以上のお湯ルールは原則変えません。 理由はサカザキ菌・サルモネラ菌による感染症リスクで、特に新生児では致命的になることもあります。
- カセットコンロでお湯を沸かす(家庭備蓄として推奨)
- 携帯ガスストーブ・ロケットストーブも非常用に
- 避難所では運営本部に「乳児用お湯」が確保されているか確認
- どうしても無理なら液体ミルク・紙コップ授乳に切り替え
残ったミルクは処分
災害時でも「飲み残しは2時間以内に処分」のルールは変えてはいけません。 雑菌繁殖による下痢・嘔吐は脱水を招き、被災状況下では致命的なリスクになります。 少なめに作って、足りなければ追加で作るのが鉄則です。
家庭備蓄の目安
- 液体ミルク:3日分(15〜21本)
- 使い捨て哺乳瓶(or 紙コップ):1日分以上
- 軟水ペットボトル:3日分(1日6L×3日=18L/大人含む全体)
- カセットコンロ+ガスボンベ:6本以上
- 母子手帳・予防接種記録のコピー:避難袋に常備