適格簡易請求書とは何か
適格簡易請求書(簡易インボイス)は、不特定多数の者を相手方とする一定の事業者が、適格請求書に代えて発行できる簡易版のインボイスです。 消費税法第57条の4第2項に規定されており、受領者の氏名または名称の記載が不要になる点が、通常の適格請求書との最大の違いです。 領収書・レシートが事実上の簡易インボイスとして使われる業種で広く採用されます。
適格簡易請求書を発行できる事業者
消費税法施行令第70条の11で限定列挙されており、以下の事業者のみが発行できます。
- 小売業
- 飲食店業
- 写真業
- 旅行業
- タクシー業
- 駐車場業(不特定多数に対するもの)
- その他これらに準ずる事業で不特定多数の者を対象とする業種
コンビニ・スーパー・飲食店・タクシーの領収書・レシートが、現在の制度下で簡易インボイスとして経費精算に使える根拠です。
適格簡易請求書の記載事項(6項目)
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号(T+13桁)
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目はその旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)
- 税率ごとの消費税額等または適用税率(いずれか一方で可)
- 受領者の氏名・名称は記載不要(通常の適格請求書との違い)
通常の適格請求書では「税率ごとの消費税額等」と「適用税率」の両方が必要ですが、簡易インボイスではどちらか一方の記載で足ります。
登録番号の形式と確認方法
適格請求書発行事業者の登録番号は「T」+13桁の数字(法人番号がある場合は法人番号13桁)の形式です。 国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で番号から事業者名・登録年月日・登録取消の有無を検索できます。 受領者は仕入税額控除を行う際、この登録番号が有効であることを確認する義務はありませんが、明らかに架空の番号が記載されている場合は仕入税額控除を否認されるリスクがあります。
免税事業者からの領収書はどう扱うか
免税事業者(適格請求書発行事業者ではない事業者)が発行する領収書には登録番号がなく、原則として仕入税額控除はできません。 ただし経過措置として、2023年10月〜2026年9月までは仕入税額相当額の80%、2026年10月〜2029年9月までは50%を仕入税額控除できます。 経過措置を適用するには、区分記載請求書等保存方式の記載事項(取引内容・税率ごとの対価額など)を満たした領収書の保存が必要です。
2026年4月施行の令和8年度税制改正
令和8年度税制改正により、2026年4月1日からインボイス制度の運用が一部見直されました。 国税庁インボイス制度特設サイト(2026年2月リニューアル)では、東京・名古屋の登録センター移転、Q&A更新(2026年6月)、申請書様式の変更などが告知されています。 最新の運用は国税庁の公表情報を参照してください。
領収書を簡易インボイスとして発行する実務手順
- 適格請求書発行事業者として登録申請(e-Tax または郵送)し、登録番号を取得する。
- 領収書のフォーマットに「登録番号(T+13桁)」記載欄を設ける。
- 取引年月日・取引内容を記載する(軽減税率対象は「※」マークを付け軽減税率対象である旨を明示)。
- 税率ごとに合計対価の額を記載する(標準10%と軽減8%が混在する場合は税率別に区分)。
- 税率ごとの消費税額等または適用税率のいずれかを記載する。
- 発行控えを7年間保存する(電子取引はPDFで電子帳簿保存法に従い保存)。
よくあるミス
- 登録番号の「T」を忘れる:13桁の数字だけでは無効。必ず「T1234567890123」のように記載。
- 税率の区分なし:標準10%と軽減8%を区分せずに「合計1万円」とだけ記載すると要件不満足。
- 軽減税率の表示忘れ:軽減税率対象品目には「※」などのマークと、その旨の表示が必要。
- 簡易インボイス対象外業種で簡易にしてしまう:BtoB専業の卸売業・製造業は適格請求書(通常版)が必要。
関連ツール
領収書作成ツールでは適格請求書発行事業者の登録番号を任意で記載できます。 請求書を発行する場合は請求書作成ツール、 消費税の内訳計算だけしたい場合は消費税計算ツールもご利用いただけます。