3条書面とは
下請法(下請代金支払遅延等防止法)第3条は、親事業者が下請事業者に製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託を行う際、注文時に「直ちに、給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない」と定めています。これが3条書面。
交付方法は、紙書面の郵送・手交だけでなく、電磁的方法(電子メール・PDF添付・電子契約サービス・FAX)も認められます。下請事業者の承諾を得ていることが条件。
下請法の適用範囲
下請法は、親事業者と下請事業者の資本金区分で適用されます。
| 取引類型 | 親事業者 | 下請事業者 |
|---|---|---|
| 製造委託・修理委託・情報成果物作成(プログラム)・役務提供(運送・物品の倉庫保管・情報処理) | 資本金3億円超 | 資本金3億円以下(個人含む) |
| 同上 | 資本金1千万円超3億円以下 | 資本金1千万円以下(個人含む) |
| 情報成果物作成(プログラム以外)・役務提供(運送・倉庫・情報処理以外) | 資本金5千万円超 | 資本金5千万円以下(個人含む) |
| 同上 | 資本金1千万円超5千万円以下 | 資本金1千万円以下(個人含む) |
フリーランス(個人事業主)への外注は、発注者の資本金が1千万円超なら、ほぼすべてのケースで下請法対象となります。
3条書面の必須記載事項8号(公取委規則第1条)
公正取引委員会の規則(令和5年12月25日改正)第1条が定める3条書面の記載事項は、次の8号にわたります。
① 親事業者・下請事業者の商号・氏名
両者の商号または氏名(名称)。法人の場合は登記上の正式名称。個人事業主の場合は氏名(屋号併記可)。
- 発注書テンプレ:「発注者」「発注先」欄
- 注意点:略称や通称ではなく、正式名称を使う。法人の「株式会社」「合同会社」を省略しない
② 製造委託等した日
発注した日(発注書を発行した日)。3条書面の発行日と同じになるのが通常。
- 発注書テンプレ:「発注日」欄
- 注意点:実際の発注日を記載。バックデート不可
③ 給付内容・受領期日・場所
発注する物品・サービスの内容、納品(受領)期日、納品場所。
- 給付内容:品名・仕様・数量を具体的に
- 受領期日:「2026年7月15日」のように明確な日付(「協議の上」は違法)
- 場所:「東京都新宿区◯◯1-2-3 弊社受発注センター」のように具体的に
- 発注書テンプレ:「明細」欄+「希望納期」欄+「納品場所」欄
④ 検査完了期日
納品物の検査を完了する期日。検査を行わない取引の場合は記載不要。
- 受領日から60日以内(下請法第4条)が原則
- 発注書テンプレ:備考欄に「受領後◯日以内に検査完了」
- 注意点:検査完了日が下請代金支払期日のカウント基準日となる場合がある
⑤ 下請代金額・支払期日
下請代金の額(消費税込み・税抜きどちらでも可・税率明示)と、支払期日。
- 支払期日:物品等の受領後60日以内(下請法第2条の2)が法定上限
- 発注書テンプレ:「合計金額」欄+「支払条件」欄
- 注意点:「月末締め翌月末払い」のような表現も、結果として60日以内に収まる場合のみ可
⑥ 手形を交付する場合の金額・満期
下請代金の支払いを手形で行う場合、手形の額・満期日を記載。下請法では「振出日から満期日まで60日以内(繊維業以外)」が要件。
- 発注書テンプレ:手形を使う場合のみ、支払条件欄に「◯月◯日振出、◯月◯日満期」と明記
- 令和8年(2026年)11月以降、手形による下請代金支払の60日ルールが「60日超は違反」として運用強化される予定
⑦ 一括決済方式・電子記録債権
下請代金の支払いを一括決済方式(ファクタリングや併存的債務引受方式)または電子記録債権(でんさいネット等)で行う場合、その方式と金額・支払期日を記載。
- 発注書テンプレ:通常の支払なら省略可。一括決済を使う場合のみ「ファクタリング方式◯◯銀行経由」「電子記録債権(でんさい)」と明記
⑧ 原材料等を有償支給する場合の品名・数量・対価・引渡日・決済方法
親事業者が下請事業者に原材料・部品を有償で支給する場合、その内容を記載。
- 発注書テンプレ:原材料の有償支給がある取引のみ、別紙「有償支給明細」を添付
- 注意点:有償支給した原材料の代金回収は、下請代金の支払い後にしないと「不当な経済上の利益の提供要請」(下請法第4条の2)違反になる
発注書チェックリスト(実務用)
発注書を発行するたびに、以下のチェックリストで漏れがないか確認します。
- □ 発注者の商号(正式名称)が記載されている
- □ 発注先の商号(正式名称・「御中」つき)が記載されている
- □ 発注日(発行日)が記載されている
- □ 品名・仕様・数量が具体的に記載されている
- □ 受領期日(納期)が明確な日付で記載されている
- □ 納品場所が具体的に記載されている
- □ 検査完了期日(or 検査基準)が記載されている(検査ありの場合)
- □ 下請代金額が記載されている(消費税込み・税抜き・税率明示)
- □ 支払期日が記載されている(受領後60日以内)
- □ 手形・一括決済・電子記録債権を使う場合、それぞれの方式と金額・期日が記載されている
- □ 原材料の有償支給がある場合、別紙明細を添付している
- □ 発注後の控えを社内保管している(書面 or PDF)
3条書面交付違反のペナルティ
3条書面を交付しなかった場合、または記載事項に不備があった場合、下請法違反となります。違反時の措置は次の通り。
- 公正取引委員会から勧告(社名公表)
- 50万円以下の罰金(下請法第10条)
- 違反業者として企業名公表・取引停止リスク
特にフリーランス保護の観点で、令和6年11月施行のフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)でも書面交付義務が定められており、下請法と並行して適用されます。
令和7年の改称:取適法へ
令和7年の改正下請法(公布日から起算して1年6月以内に施行)で、下請法は「中小受託取引適正化法」(略称:取適法)に改称される予定です。改称後も3条書面の交付義務は維持され、対象範囲がさらに拡大される見込み。最新の公正取引委員会の通達を確認してください。
主な改正ポイント:
- 法律名の変更(下請法 → 中小受託取引適正化法)
- 「親事業者」「下請事業者」の用語が「委託事業者」「中小受託事業者」に変更
- 適用対象の拡大(従業員基準の追加検討)
- 手形による支払いの60日要件の明文化
- 運送業の追加(買いたたきの規制対象に)
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