PDF送付状をメール送付するときの電帳法対応とファイル命名規則
国税庁『電子帳簿保存法 電子取引の保存要件』(2026年6月時点)
PDFにした送付状を取引先へメール添付で送ると、電子帳簿保存法(電帳法)の「電子取引」に該当します。猶予措置は2024年1月で終了し、2026年現在は3要件(真実性・可視性・検索機能)の保存が完全義務化されています。本記事では実務上の運用ポイントを整理します。
1. 電子取引に該当するもの
次のいずれかで授受した取引情報(送付状・請求書・領収書・契約書など)は電子取引です。
- メール添付(PDF・Excel・Wordいずれも対象)
- クラウドサービス(freee・マネーフォワード・楽楽明細など)
- EDI取引
- ペーパーレスFAX
- 取引先サイトからのダウンロード(請求書PDFを取引先ポータルから取得した場合等)
紙で送ったものをスキャンしただけのデータはスキャナ保存(別ルール)です。
2. 要件①:真実性
改ざんを防ぐ仕組みを、次のいずれかの方法で確保します。
- タイムスタンプ付きで授受する(取引先側の対応が必要)
- 受領後すみやかにタイムスタンプを付与する
- 訂正削除の履歴が残るシステム(JIIMA認証ソフト等)に保存する
- 事務処理規程を整備・運用する(中小事業者で最も多い選択)
事務処理規程は国税庁が雛形を公開しています。「電子取引データの取扱規程」として、訂正削除のルールと記録方法を社内で定めれば足ります。
3. 要件②:可視性
税務調査時、整然と表示できる状態を保ちます。
- ディスプレイ・プリンタ・操作説明書を備える
- PDFビューアで14インチ以上のディスプレイ表示が想定される
- システム概要書(市販ソフトの場合は操作マニュアルで代替可)
実務的には、PDFファイルと普通のPCがあれば満たせます。
4. 要件③:検索機能
次の3条件で検索できる必要があります。
- 取引年月日
- 取引金額
- 取引先名
JIIMA認証ソフトを使えば自動でメタデータが付与されます。ソフトを使わず Excel + フォルダ管理する場合は、ファイル命名規則と索引簿(Excel)で対応します。
※ 売上1,000万円以下の事業者は検索機能不要(税務調査時にダウンロード提示できればOK、2024年改正で恒久化)。
5. ファイル命名規則(おすすめ)
国税庁の雛形に沿った命名例:
- 20260620_株式会社A商事_550000_送付状.pdf
- [YYYYMMDD]_[取引先]_[金額]_[書類種別].pdf
取引先名は表記揺れを避けるため社内マスタで統一します(「(株)」「株式会社」を混在させない)。
6. フォルダ構成
年度別→月別→取引先別が標準です。
/電子取引/
/2026/
/06/
/株式会社A商事/
20260620_株式会社A商事_550000_送付状.pdf
20260620_株式会社A商事_550000_請求書.pdf
/B株式会社/
20260618_B株式会社_330000_送付状.pdf
/07/
...バックアップは外付けHDDまたはクラウド(Google Drive・OneDrive)の2重化推奨。
7. JIIMA認証ソフト
運用負荷を下げたい場合、JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)認証を受けた電子取引ソフトを使います。代表例:
- 楽楽明細/楽楽電子保存(ラクス)
- freee 電子帳簿保存
- マネーフォワード クラウド債務支払/クラウドBox
- invox電子帳簿保存(Deepwork)
- BConnectionデジタルトレード(NTTコミュニケーションズ)
月額数千円〜。タイムスタンプ・訂正削除履歴・自動検索メタデータが標準装備です。
8. よくある誤解
- 「PDFを印刷して紙保存すればOK」→ NG。電子取引は電子のまま保存必須
- 「メールアカウントに残しておけばOK」→ NG。検索3条件を満たさない
- 「送付状は必須書類ではないから保存不要」→ NG。電子取引データはすべて対象
- 「個人事業主は対象外」→ NG。所得税・法人税の申告者すべて対象