3つのペース戦略
マラソンのペース戦略は大きく3つに分けられます。
- ・イーブンペース:前半・後半とも同じペース。理論上もっとも効率的
- ・ネガティブスプリット:後半の方が速い。世界記録の多くがこのパターン
- ・ポジティブスプリット:前半が速く後半遅い。市民ランナーの典型的失敗パターン
男子マラソン世界記録(ケニアのケルビン・キプタム、2時間00分35秒・2023シカゴ)も後半の方が速いネガティブスプリット。プロ選手ほど後半を上げる傾向があります。
なぜ突っ込みが致命的か
最初の5kmを目標ペースより20秒/km速く入ると、貯金は100秒できます。しかし
- ・解糖系(速いペース)に偏るとグリコーゲンを早く使い切る
- ・心拍数が早期に上がり、後半で粘れない
- ・乳酸蓄積で30km以降に1km10秒以上遅くなる
結果、前半の貯金100秒に対して後半のロスは300〜600秒。失速分が貯金を大きく上回るため、トータルタイムが大幅に遅くなります。
サブ4(4時間切り)の5kmごと通過タイム
目標タイム3時間58分(保険2分)でイーブンペースを組む例。1kmペース約5'38"/km。
- ・5km:28分10秒
- ・10km:56分20秒
- ・15km:1時間24分30秒
- ・20km:1時間52分40秒
- ・ハーフ地点(21.0975km):1時間58分53秒
- ・25km:2時間20分50秒
- ・30km:2時間49分00秒
- ・35km:3時間17分10秒
- ・40km:3時間45分20秒
- ・ゴール(42.195km):3時間58分00秒
サブ3.5(3時間30分切り)の通過タイム
目標3時間28分でイーブン。1kmペース約4'55"/km。
- ・5km:24分35秒
- ・10km:49分10秒
- ・15km:1時間13分45秒
- ・20km:1時間38分20秒
- ・ハーフ:1時間43分47秒
- ・25km:2時間02分55秒
- ・30km:2時間27分30秒
- ・35km:2時間52分05秒
- ・40km:3時間16分40秒
- ・ゴール:3時間28分00秒
初心者完走(5時間切り)の通過タイム
目標4時間55分でイーブン。1kmペース約7'00"/km。
- ・5km:35分00秒
- ・10km:1時間10分00秒
- ・15km:1時間45分00秒
- ・20km:2時間20分00秒
- ・ハーフ:2時間27分43秒
- ・25km:2時間55分00秒
- ・30km:3時間30分00秒
- ・35km:4時間05分00秒
- ・40km:4時間40分00秒
- ・ゴール:4時間55分00秒
初心者は給水で歩く時間が長くなりがちです。各給水ポイントで30秒〜1分のロスを見込んで、走行中は若干速めの6'50"/kmで巡航すると目標達成しやすくなります。
ネガティブスプリットの組み立て方
前半21kmを目標ペース+10〜15秒/kmでスタートし、後半21kmを目標ペースで巡航するパターン。サブ4なら
- ・前半21km:5'50"/km → 2時間02分
- ・後半21km:5'30"/km → 1時間56分
- ・合計:3時間58分(サブ4達成)
前半に余裕を残すため、30km以降の脚の動きが圧倒的に違います。リスク:後半に上げる脚が残っていない場合、イーブンより遅れる可能性があります。30km走で「ラスト10kmペースアップ」を試した経験者向けの戦略です。
給水戦略
国内主要マラソンは2.5〜5km間隔で給水所が設置されています。基本ルールは
- ・すべての給水所で必ず取る:「次でいいや」が脱水の入口
- ・1回100〜150ml:飲みすぎは胃が動かなくなる
- ・10kmまではスポーツドリンク:糖と電解質の補給
- ・30km以降はスポドリ+水:口直しと頭からかぶる
- ・ジェル:5km・15km・25km・35kmの計4本が標準
気温20度以上の大会では脱水リスクが急上昇します。発汗量は1時間で1.0〜1.5L、長時間運動の水分補給は厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも繰り返し強調されています。
時計のラップ管理
- ・1km自動ラップを必ずONに
- ・上限ペースアラート:目標ペース−5秒/kmで設定
- ・5kmラップ表示:累積タイムが事前計算と合っているか確認
- ・心拍ゾーン:マラソンペース帯(最大心拍の75〜85%)から外れたら調整
時計ばかり見ると消耗するので、確認は1kmラップアラートが鳴ったときと給水ポイントのみに絞ります。
失速サインへの対応
30km以降に脚が動かなくなったときの対応策。
- ・ジェル+水分:糖質補給で5〜10分後に回復することが多い
- ・ペースを5〜10秒/km落とす:完走優先で目標を緩める
- ・給水で30秒歩く:心拍を落として再スタート
- ・ふくらはぎが攣ったら止まる:無理に走るとアキレス腱断裂の恐れ
胸の痛み・めまい・冷や汗が出たら即座にコース脇に出てスタッフを呼ぶこと。完走より命優先です。
使ってみる
→ ランニングペース計算ツールで目標タイムの通過タイム表を確認
出典:日本陸上競技連盟「ロードレース距離計測基準」/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」/厚生労働省「身体活動のメッツ表(e-ヘルスネット)」。