職場の騒音と労働安全衛生規則:85dBで何が変わるか
職場の騒音対策は、家庭の生活音とはまったく別の枠組みで動いています。労働安全衛生規則第585条と、厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドライン」をもとに、85dB・90dBという数字が何を意味するか、事業者にどんな義務が生じるかを整理しました。
対象になる「強烈な騒音を発する場所」
労働安全衛生規則第585条は「強烈な騒音を発する場所」での作業について、事業者に施設の区画・耳栓その他の保護具の備え付けなどを義務づけています。「強烈な騒音」とされるのは、たとえば次のような作業が中心です。
- ・鉄板の打ち抜き・はつり・グラインダー作業
- ・コンクリートカッター・削岩機の使用
- ・チェーンソー・刈払機の使用
- ・印刷機・撚糸機・編機など連続稼働の生産設備
- ・空気圧縮機・送風機の運転場所
※ 通達・告示で対象作業が列挙されています。最新の対象は厚労省・労働基準監督署で確認してください。
85dB・90dBで変わる管理区分
厚労省の「騒音障害防止のためのガイドライン」では、作業環境測定の結果に応じて管理区分Ⅰ〜Ⅲが定められています。閾値は次の通りです。
| 区分 | 等価騒音レベル | 事業者の義務 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 85dB未満 | 現状維持・周知 |
| Ⅱ | 85dB以上 90dB未満 | 耳栓使用・周知の徹底 |
| Ⅲ | 90dB以上 | 設備改善・耳覆い等の使用・健康診断強化 |
85dBが「保護具着用を推奨する境界線」、90dBが「設備側の改善まで踏み込む境界線」というイメージです。
事業者に求められる主な対応
- ・作業環境測定:原則6か月以内ごとに1回、定められた方法で測定。専門業者への委託が一般的。
- ・耳栓・耳覆いの支給と着用指示:管理区分Ⅱ・Ⅲでは保護具を備え付け、着用を徹底。
- ・健康診断の実施:オージオメータ等による聴力検査を雇入れ時・6か月以内ごとに実施。
- ・掲示・周知:作業場の見やすい場所に、騒音レベルと耳栓使用の必要性を掲示。
- ・設備改善:管理区分Ⅲでは、設備の低騒音化・遮音壁設置・作業時間短縮など根本対策が必要。
セルフチェックには本ツールが使える、ただし限界あり
「自分の作業場が85dBを超えてそう」と感じたとき、最初の感覚チェックには本ツールが使えます。手元のスマホで測って、瞬間値や平均値が85dBを超えるかどうかを見れば、相談すべきかの判断材料になります。
ただし、法令上の「等価騒音レベル」は専門の積分型騒音計(A特性、LAeq)で長時間測定する必要があります。本ツールの値はあくまで体感確認用と理解し、正式な数字が必要な場合は産業医・労働基準監督署・専門業者に相談してください。
難聴は「気づいたとき」には進んでいる
騒音性難聴の特徴は、痛みもなく、初期は4kHz付近の高音だけが落ち、本人が自覚しにくいことです。「最近相手の声が聞き返しが多い」「テレビの音量を上げがち」と感じたら、無料健康診断や耳鼻科の検査を受けると早期発見につながります。85dB前後は「24時間休まずさらされ続けると慢性難聴のリスクがある」水準と理解されており、保護具の習慣化が大事です。