日本標準時の仕組み:NICT・JJY・東経135度・うるう秒
普段なにげなく見ているスマホやパソコンの時計は、誰が・どうやって正確に動かしているのか。本記事では、日本標準時(JST)を作っているNICT(情報通信研究機構)の仕組み、原子時計と国際協定世界時UTCの関係、長波標準電波JJYの役割、うるう秒、明治からの法的経緯を整理します。
日本標準時の法的根拠(明治十九年勅令第五十一号)
日本標準時は、1886年(明治十九年)7月13日に発布された勅令第五十一号「本初子午線經度計算方及標準時ノ件」によって定められました。
- ・本初子午線:英国グリニッジ天文台基準(東経0度)
- ・日本中央標準時:東経135度の子午線の時を採用
- ・施行日:1888年(明治21年)1月1日午前0時から
- ・UTC+9:協定世界時より9時間進んだ時刻に対応
東経135度の子午線は兵庫県明石市を通り、明石市立天文科学館などにモニュメントがあります。台湾統治時代には西部標準時(東経120度・UTC+8)も併用されましたが、現在の日本ではJST単一体系です。
NICTが管理する原子時計とアンサンブル時系
現在の日本標準時は、東京都小金井市にあるNICT(情報通信研究機構)が国家標準として生成・配信しています。
- ・セシウム原子時計:18台(公表時点)を常時運用しアンサンブル平均
- ・水素メーザー:短期安定度の高い基準として併用
- ・UTC(NICT):NICTが生成する協定世界時実現値(Japan Standard Time = UTC(NICT)+9h)
- ・国際比較:BIPM(国際度量衡局)にデータ送信、世界の時刻と比較され国際協定世界時UTCに反映される
UTC(NICT)は世界のUTCとの差が数ナノ秒〜数十ナノ秒という極めて高い精度で維持され、日本国内の標準周波数と標準時刻はすべてこの基準から生成されます。
長波標準電波JJY(40kHz・60kHz)の役割
NICTは日本国内の時計を同期させるため、長波標準電波JJYを2つの送信所から24時間配信しています。
- ・おおたかどや山標準電波送信所(福島県):40kHz・東日本中心
- ・はがね山標準電波送信所(佐賀県):60kHz・西日本中心
- ・到達範囲:それぞれ半径約1,000km、日本全土をほぼカバー
- ・送信内容:年月日・時分秒・うるう秒予告・曜日など
- ・用途:家庭の電波時計、放送局の時刻同期、産業計測機器
一方、インターネット経由ではNTP(Network Time Protocol)でntp.nict.jpがNICTから無償公開されており、PCやスマホはこれを使って自動同期しています。誤差は数ミリ秒〜数十ミリ秒程度です。
うるう秒(閏秒)とその扱い
地球の自転速度はわずかに揺らぐため、地球時刻(UT1)と原子時刻(TAI)にズレが生じます。これを±0.9秒以内に保つため、IERS(国際地球回転事業)の判断で挿入されるのが「うるう秒(閏秒)」です。
- ・挿入頻度:1972年以降不定期に27回(公表時点)。すべて正のうるう秒
- ・挿入時刻:日本時間で1月1日または7月1日の朝8:59:60(UTC 23:59:60)
- ・表示:NICT配信時刻には23:59:60が1秒挿入される
- ・将来:2035年までに廃止または運用変更の方向(CGPM 2022決議)
一般的なパソコン・スマホのOS時計やJavaScriptのDateオブジェクトは原則うるう秒を表現しません。WindowsやmacOSは「スミア」と呼ばれる手法で前後の1日に分散して吸収する実装が一般的です。
サマータイム(夏時刻)の歴史
日本はGHQ占領下の1948年〜1951年に「夏時刻法」を実施したのち、現在まで再導入していません。
- ・1948年〜1951年:5月第1土曜深夜〜9月第2土曜深夜の期間で1時間進めた
- ・1952年廃止:労働時間延長や生活リズムへの影響を理由に廃止
- ・2018年再導入検討:東京五輪暑さ対策で議論されたが見送り
- ・米国・EU:DST(Daylight Saving Time)として現在も実施中
海外と時刻をやり取りする際は、相手国がDST期間に入っているかで時差が±1時間変わる点に注意が必要です。デジタル時計ツールでJSTを基準に置いておけば、こうした混乱を防ぐ補助になります。本サイトのデジタル時計は端末NTP同期されたJSTをそのまま表示します。