手軽屋
ツール一覧

お酒に強い・弱いは何で決まる?分解酵素ALDH2と日本人の遺伝子

「鍛えれば強くなる」は半分嘘。遺伝子型でほぼ決まる体質を直視する。

アルコールが体から消えるまで、2段階で分解される

飲んだお酒(エタノール)は、胃と小腸で吸収されて血液に乗り、ほぼすべて肝臓で分解されます。分解は2段階で進みます。

  1. 第1段階:アルコール脱水素酵素(ADH:Alcohol Dehydrogenase)が、エタノールをアセトアルデヒドに変える。
  2. 第2段階:アルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2:Aldehyde Dehydrogenase 2)が、アセトアルデヒドを酢酸に変える。酢酸は最終的に水と二酸化炭素になって体外へ。

お酒で顔が赤くなる・頭痛・吐き気・動悸が出る原因は、第2段階で詰まったアセトアルデヒドが体に溜まること。これがいわゆる「フラッシング反応」です。

ALDH2の活性は遺伝子型で3パターン

ALDH2を作る遺伝子には正常型(N型)と低活性型(D型)があり、両親から1つずつ受け継ぎます。組み合わせで3パターンです。

遺伝子型活性体感日本人の割合
NN型高活性顔が赤くならない・酔いにくい約56%
ND型低活性少量で顔が赤くなる・気持ち悪くなる約40%
DD型不活性ほぼ飲めない(下戸)約4%

欧米人ではND型・DD型はほぼ存在しません。「日本人の約4割は飲んでもアセトアルデヒドが溜まりやすい体質」は、ここから来ています。

「鍛えれば強くなる」は本当か

ALDH2の遺伝子型は生涯変わりません。お酒に弱い人が飲み続けて「強くなった」と感じるのは、肝臓のミクロソームエタノール酸化系(MEOS)が誘導されて第1段階の処理が少し速くなったり、酔いの不快感に慣れたりするだけ。アセトアルデヒドが体に溜まるリスクは変わらず、むしろ「強くなった気がする」せいで飲む量が増え、食道がん・口腔がん・咽頭がん・肝臓がんのリスクが大きく上がることが疫学研究で示されています。

ND型の人が顔が赤くなりながら飲み続ける生活は、アセトアルデヒドの慢性曝露という意味で最もリスクが高いとされています。

女性のほうが酔いやすい・肝障害が早い理由

ALDH2の活性は男女差がほぼありませんが、女性は男性より体内水分量比率が低く、同じ純アルコール量でも血中濃度が高くなります。さらに女性ホルモンの影響でアルコール代謝が遅くなる時期があり、男性より少ない量・短い飲酒歴で肝障害が起きやすいことが知られています。厚生労働省も生活習慣病リスクの目安を女性は男性の半分(純アルコール20g/日以上)に設定しています。

健康診断・保険で問われる「飲酒履歴」の意味

健康診断で見られるγ-GTP、AST(GOT)、ALT(GPT)は、肝細胞が壊れたときに血中に出る酵素です。γ-GTPは特にアルコール性肝障害の指標として知られていますが、ALDH2が低活性の人はそもそも肝臓への負担が大きく、同じ飲酒量でも数値が高く出やすい傾向があります。

生命保険・医療保険・がん保険の告知書に出てくる「1日の飲酒量」「週の飲酒日数」は、契約時の保険料率や引受可否の判断材料です。虚偽申告は告知義務違反として保険金不払いの理由になります。純アルコール量の計算ツールで自分の実態を数値化しておくと、告知時にも迷いません。

体質を直視した付き合い方

  • 顔が赤くなるタイプ(ND型)は、量を増やさない。回数で楽しむ。
  • 飲めないタイプ(DD型)は、無理に飲まない。「お酒の席に出る権利」と「飲む義務」は別。
  • 強いタイプ(NN型)は、酔いの自覚なく飲みすぎる傾向。総量チェックを習慣に。
  • ALDH2の遺伝子検査は健康保険適用外で、自費(約2,000〜5,000円)で受けられる検査キットもあります。

続けて読む