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契約期間の数え方|「30日以内」「6か月後」の起算日と満了日

民法第140〜143条の期間計算ルールを、契約書実務の文例と一緒に解説します。初日を入れるか入れないかで1日ズレるトラブルを防ぐためのチェックポイントつき。

期間計算の4本柱

日本の契約・期限の数え方は、民法第6章「期間の計算」の138条〜143条にまとまっています。実務でよく使うのは次の4条。

  • 第140条:日・週・月・年で期間を定めたら、初日は算入しない(初日不算入)
  • 第141条:期間は末日の終了をもって満了する
  • 第142条:末日が休日で取引慣習がない場合、翌日に満了する
  • 第143条:週・月・年は暦に従って計算し、応当日の前日に満了する

この4条を押さえると、契約書の「○日以内」「○月後」が法律的にどう解釈されるかが分かります。

第140条:初日不算入の原則

「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」

起算日(その日の途中で期間が始まる場合)は1日目に数えないのが原則。例えば6月1日午後3時に契約を締結し、「契約締結日から30日以内」とした場合、6月2日が1日目で7月1日が30日目になります。

ただし契約書に「契約締結日を含めて30日以内」「契約締結日から起算して30日以内」と明記すると、6月1日が1日目になり6月30日が30日目です。条文の任意規定にあたるため、契約で別段の定めができます。

第141条:末日の終了

「前条に規定する場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。」

末日の午後12時(深夜0時の直前)に期間満了。「7月1日まで」の契約であれば、7月1日23時59分59秒まで有効で、7月2日の0時0分0秒に失効します。

ただし営業時間や受付時間が定められている契約は、その時間内に履行・申出が必要です。「申出は事業所の営業時間内に書面で行う」と書かれていれば、深夜0時まで有効でも実質は17時や18時が締切になります。

第142条:末日が休日のとき

「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)第三条に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。」

条文には「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」という条件がつきます。役所・銀行・裁判所など慣習上休業の機関への手続きは翌平日に繰延べ。一方、コンビニ・ネット申込・電子契約は24時間営業の慣習が確立しているため、休日でも繰延べされない可能性があります。

実務的には、契約書に「末日が土日祝の場合は翌営業日に満了する」と明記しておくのが安全。「翌営業日」の定義(土日・国民の祝日・年末年始など)も別途置きます。

第143条:暦による期間計算

「週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。」 「週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。」

ポイントは「応当する日の前日」に満了するという点。「6月15日から3か月後」は9月15日の前日(9月14日)23時59分59秒に満了です。

応当日が無いケース(1月31日から1か月後 → 2月31日は存在しない)は、その月の末日に満了。1月31日からの1か月は2月28日(うるう年は29日)が満了日です。

具体例:契約書の文例別の解釈

同じ「30日後」でも書き方で意味が変わります。

  • 「契約締結日から30日以内」:初日不算入。6月1日締結なら7月1日まで
  • 「契約締結日から起算して30日以内」:初日算入。6月1日締結なら6月30日まで
  • 「契約締結日の翌日から30日以内」:明示的に翌日起算。6月1日締結なら7月1日まで
  • 「契約締結日を含み30日間」:初日算入。6月1日締結なら6月30日まで

「○日以内」と「○日間」も微妙にニュアンスが違うため、社内の標準書式を統一しておくとトラブルが減ります。

具体例:自動更新の解約申出

賃貸借契約や定期サービスの「契約満了の6か月前までに申し出ない場合は自動更新」という条項。

  • ・契約期間:2026年4月1日〜2027年3月31日
  • ・解約申出期限:「契約満了の6か月前まで」
  • ・起算日:契約満了日2027年3月31日から逆算
  • ・6か月前の応当日:2026年9月30日
  • ・申出期限:2026年9月30日までに申出が到達していること

「到達主義」(民法97条)により、申出書面が相手方に到達した日が基準。郵送なら普通郵便で5日前、内容証明で3日前には投函しておくと安全です。

具体例:手付解除の期限

不動産売買の手付解除「相手方が契約の履行に着手するまで」の判断は、起算日のズレで揉めがちです。

  • ・「契約締結後14日以内に手付解除可能」と書かれた場合
  • ・6月1日締結 → 初日不算入で6月2日が1日目
  • ・14日目は6月15日。6月15日23時59分59秒まで手付解除権がある
  • ・契約書に「契約締結日を含む」と明記があれば6月14日まで

クーリングオフ:8日間の数え方

訪問販売・電話勧誘販売のクーリングオフは8日間ですが、これは民法と別の特別法(特定商取引法第9条等)で「申込書面または契約書面を受領した日から起算して8日間」と定められています。

  • 「起算して」と明記されているため初日算入
  • ・6月1日に書面受領 → 6月1日が1日目、6月8日が8日目
  • ・6月8日中に書面発送(消印・送信日時)であれば有効(発信主義)
  • ・特定商取引法は2022年改正で電磁的方法(メール・専用システム)でのクーリングオフも可能

民法の初日不算入と違って初日算入なので、混乱しないよう注意。

月末契約のトリッキーなケース

月末日(28日〜31日)に契約締結すると応当日問題が起きます。

  • ・1月31日締結、「6か月後まで」契約 → 7月31日応当 → 期間満了は7月30日(前日)
  • ・1月31日締結、「1か月後まで」契約 → 2月31日は無し → 期間満了は2月28日(うるう年は29日)
  • ・3月31日締結、「1か月後まで」契約 → 4月31日は無し → 期間満了は4月30日

自動更新やサブスクのプラン変更で「月末締切」を採用すると、月末日数の違いでトラブルが起きやすくなります。社内処理は「毎月20日」など固定日にする運用が無難です。

トラブル防止のチェックリスト

  • ・契約書の文言に「初日不算入か算入か」を明示する
  • ・「○営業日」を使うなら、営業日の定義(土日祝・年末年始)を別途置く
  • ・期限末日が土日祝に当たる場合の繰延べ規定を入れる
  • ・電子メール・チャットでの通知が有効か明記する
  • ・国際契約の場合、適用法と時差(東京時間か相手国時間か)を明示
  • ・社内システムの日数計算ロジックを年に1度監査する(うるう年バグ対策)

使ってみる

→ 日数・日付計算ツールで起算日と満了日を確認

出典:民法第138〜143条(e-Gov法令検索)/民法第97条(意思表示の到達)/特定商取引法第9条/国民の祝日に関する法律第3条。